業務日誌

東京農業大学(元三重大学)教員による業務日誌です。農業経営学の見地から,食料・農業・農村・環境の問題を考えています。

9月28日(月):調査33

イングランド南西部での調査開始。

・午前はサマーセット(Somerset)州政府にて,新規参入支援制度について聞き取り調査。ここは施策がほぼ撤退プロセスに入っている。ともあれ,なぜ撤退が止まらないのかについてはよくわかった。

・午後は,デボン(Devon)州でおそらく最も大規模な農業経営を行っている団体(トラスト,会社,パートナーシップなどが何重にも入り混じっていて,企業形態を的確に表すことが難しい)にて,農業経営の動向について聞き取り。イギリスの中央政府の役人が最近訪問したらしく,それと同じ資料を見せてもらう...うまくやっているというべきか,大規模でも赤字は赤字と問題視すべきか,なかなか評価に困る。

・夕方にエクセター(Exeter)大学を訪問し,共同研究をしている研究者と面会。時間があまりなかったのだが,手っ取り早く諸々の情報交換を行う。

午後の調査先は,日本で流行の「企業の農業参入」へのインプリケーションを得るべく訪れているのだが,イギリス人に言わせれば「家族経営よりも企業の方が効率的に農業経営を行う(から持続性が高い)」という命題は1980年代に与えられ,その答えは既に出ている(すなわち偽)という。

日本での議論は,(少なくとも自分が先週参加した学会シンポの議論では)目○○が鼻○○を笑うような気がしてどうも納得できないのだが,本格的に取り組むと大変な課題に取り組んでいるような気がしてきた。結局,今日の午後の農場が相対的にいいパフォーマンスを挙げているのも,優秀なマネージャーがやっているから。組織の形態がどうのとか,組織が持つノウハウの出自が農業・非農業のどちらかという問題ではなく,結局はそういうことだと思うのは自分だけか?