業務日誌

東京農業大学(元三重大学)教員による業務日誌です。農業経営学の見地から,食料・農業・農村・環境の問題を考えています。

8月21日(金):卒論指導ゼミ

標題については最後に書くとして。

・講座ホームページの更新。今回は新聞記事の転載をしたこともあり,著作権やら肖像権やら手続きは色々とこなさないといけなかったのだが,逆に言えば手続きすればよいことでもある。

・昨日終了した「社会調査演習」学生実習の後始末作業。まずは一息ついているのだが,報告書のとりまとめという難作業が残っている。

・卒論指導ゼミ。夏休みに1回はやらないとという趣旨だったのだが,案の定多くの卒論生が何の準備もしていない。何のためのゼミなのか分かっていない。終了後は,卒論生1名を個別指導。

・もうすぐ開始予定の某委託事業に向けた諸々の作業。事業に向けて新たに採用する非常勤職員のPC設置作業やら,書類上の手続きやら。書類については,事務方が必要なものを最初からきちんと提示してくれればよいものを,ずるずると追加書類を請求されている。今日も6時過ぎにお役所系の書類が必要だと連絡があったが,お役所はすでに閉まっており,週明けまで動けないし,書類の性格上,すぐに手に入るものでもない。予定では9月1日採用なのだが,どうなることやら。また,事業開始後すぐに必要になる物品類の注文準備(あくまで準備)。事業開始後すぐに自分は海外出張だが,非常勤職員の勤務はスタートするので,不在中に必要な作業は事前に準備しておかないといけない。

・今度の日・月と実施予定の農産物直売所調査(学生主体)の準備。調査票など関連資料の打ち出しや公用車の借入手続きなど。

・某学会から依頼されていた投稿論文の査読。すでに一度査読した原稿で,今回は再査読。評価を上げることは難しく,据え置くか下げるか。詳しくは書けないのだが,なんでこういう論理展開をするのか理解不能。作業は未完。

最後に標題に関するコメント。

三重大に来てから丸5年が経ったが,「卒論指導ゼミ」は相変わらず改善が見られない。もちろん,自分も何も対策を打たなかったわけではない。単にコメントするだけでなく一度は必ず学生と一緒に現場に行く(2年前),自分が責任を持って指導する学生を明確化し,その学生の卒論には全責任を負って指導する(昨年)と色々と工夫は重ねてきたつもり。「ゼミ」以外の卒論指導では,それなりに改善はしてきていると思う。

何がダメかといえば(今日もその典型だったのだが),定期的にゼミで発表するとなると,「とりあえず」感がありありの中途半端なレジュメを持ってくるか,もしくは何もしてこない。「ゼミ」と銘打っているためか,3年生までのゼミ(演習)と同じように,とりあえず出席すれば何とかなるという雰囲気。とにかく,あの「あーでもない,こーでもない」という不毛な時間が耐えられない(そういう時間が必要なことはわかるが,それは各自が自分の時間でやればいいのであって,ゼミでやることではない)。

定期的な「ゼミ」形式では,このだらけた雰囲気は変わらないだろう,というのが1点。こちらがガミガミ言った所で,学生はその時間だけ我慢すればすむ話。

もう1点は,大学の「教育」のあり方。「講義」は,教員が持っているその分野の知識(基礎から最前線まで)を学生にわかりやすく整理して伝えるもの。「演習」や「実習・実験」は,知識内容というより,知識を獲得するプロセスや方法論,より実際的な技能を学ぶもの。この辺りは自分でも理解(というか納得)ができている。いわば,自分が研究活動で培ってきた知識なり技能を伝えるのが仕事。

その中で,なんとも位置づけが微妙なのが「卒業研究」。建前上は,教育の総仕上げであるが,今まで受動的に教育されてきた学生が,教育の「延長」で主体的になるべき研究に取り組むのは原理的にありえない(もちろん,受身の「教育」よりも主体的に動ける「研究」の方に嬉々として取り組む学生は例外的にいる)。

ならば,こちらが与えた仕事(研究テーマ)をきちんとこなしてもらうことの方がよほど有意義。こちらとしては「研究」活動の一環だが,研究活動に従事する経験がより大きな「教育」効果を学生にもたらすはず。換言すれば,大学教育に大いに問題があることは自覚しているが,やはり「教育のための教育」は大学ですることではなく,「研究のための教育」なり「研究を通じた教育」(教育学部なら「教育を通じた研究」はありえる)であるべき。

大学教員である以上,研究をベースにすべき。誤解がないように付言すると,大学の教育の質が低いのは,どこかの新聞のコラムにあったように「大学教員が惰眠を貪ってきた」からであって,教育をおろそかにし研究活動に勤しんできたからではないので念のため。研究なしでは教育の質は短期的にも中長期的にも確実に低下する。

ということで,結論として卒論生にアナウンスしたことは,自分が「卒論指導ゼミ」から一旦離脱すること。某委託事業が入り,今までとは勤務体系が変わりそうということも一因だが,むしろいいきっかけになっている。