業務日誌

東京農業大学(元三重大学)教員による業務日誌です。農業経営学の見地から,食料・農業・農村・環境の問題を考えています。

6月16日(金):進捗報告2

[15日]
・一日かけて,北タイの山岳地帯を視察。チェンマイ大学が高地農業における化学肥料の過剰投入を抑制する試みを別プロジェクトでしているのだが,それに同行。実践圃場における野菜の生育状況のチェックや土壌のサンプリング。さらに土地を提供してもらっている農家との意見交換。いわゆる山岳民族が居住している特別なエリアで,かつてはケシが栽培されていたような場所。北タイに関する文献を検索する過程で,この地域に山岳民族が居住していることは把握していたのだが,専ら民俗学・人類学からのアプローチだったので,まさか自分が実際に訪れることになるとは予想せず。貴重な経験になった。

・夜はチェンマイ大学の先生に招待され会食。

一日で結構な日焼け。蚊にも数箇所かまれる。
チェンマイ大の学生と英語でコミュニケーションを試みるも通じず。英語を話すのを恥ずかしがる気性は日本人に似ているようだ。

[16日]
・午前に,プロジェクトが開発している農薬低減技術を普及すべく設置しているモデル農家を訪問。バラ農家と柑橘農家。コストの状況を聞きたいのだが,「年初に8万バーツを銀行からおろして使う」とか言われてなかなか調査にならない。随伴してくれた青年海外協力隊員によれば,農家によって売値が全然違うらしい。技術にかなりばらつきがあるのか,それとも産地による自然条件の差が歴然なのか。

・午後はチェンマイ大のJICAオフィスで作業。午前の視察結果のとりまとめと協力隊員が出入りしている農家に連れて行ってもらうための日程調整。

今日,気になったのは「モデル農家」の意味。当初は,技術を実践する場としての「モデル農家」を予想していたのだが,実際には病虫害の発生状況や土壌分析などデータ収集のための「モデル農家」であり,農薬低減技術を実践するには至っていない(そこまでの協力は得られていない)。モデル農家の経営が,技術導入でどのように変化したかを検証するという形での貢献を考えていたのだが,この構想はもろくも崩れ去ったことになる。

言葉が分からないと,特に農家調査の際には困難さが際立つ。今回はまだ英語の達者なチャンマイ大の先生と日本人の協力隊員がいてくれるので何とかなっているが,それでもフラストレーションはたまる。

明日・明後日は,まじめに(笑)休みます。プロジェクトにどのような貢献ができるか考え直さないと。